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カクモンシジミ
 裏面斑紋の特徴的なシジミチョウです。広く開けた草地を飛んでいました。
 これがカクモンシジミか。実物は初めて見たけど、すごい斑紋だなあ。などと思い、丁寧に撮影したのですが、しばらくして、辺りを何頭も飛んでいることに気付きました。


カクモンシジミ♂ Leptotes plinius ― 2009年12月25日 Dambri, Lam Dong, VIETNAM
アオザイシジミ
 この Neocheritra fabronia は、白を基調としたコントラストの高い配色に水色のアクセント、そして長い尾状突起が特徴的な、美麗種中の美麗種。そして、知る人ぞ知る珍品。なのですが、Dambriでは例外的によく見られます。
 日中は高い木の上にいるようで、テリトリーを張って活発に飛び回っていたのも確か昼頃。しかし、とにかく高いところばかり飛ぶため、撮影は時折低いところに下りてくる午前中がチャンスです。




Neocheritra fabronia ♂ ― 2009年12月29日 Dambri, Lam Dong, VIETNAM

 メスは、オスより淡い色合いで、翅表が真っ黒。オスは後翅に独特な性標を備えていますが、それもありません。


Neocheritra fabronia ♀ ― 2009年12月25日 Dambri, Lam Dong, VIETNAM
南ベトナム あとがき
 前回までで本編終了。次回から番外編。整理が追いつかず掲載できなかった画像を、種類、あるいは分類群毎に分けて紹介していくつもりです。でも、本編より番外編の方がボリュームは大きくなりそう。むしろ、番外編が本編。
 東南アジアの他の国々もそうですが、ベトナムは果物が美味しく、そして安い。日本では高級品のザボン(ブンタン)やチェリモヤ、マンゴーなどが数十〜数百円で買えるのは魅力的です。それから、あまり綺麗には見えないのですが、写真右上に見える小粒な柑橘類もお勧め。



 また、魚介類も美味しいものが食べられ、これは正直なところ意外でした。飲食店でエビのビール蒸しを頼むと、生きたエビが出てきて、それを目の前で調理してくれます。路上の魚屋でも、水を張った容器に氷を入れ、エアーレーションをかけて、生かした魚を売っています。魚介類に活きを求める文化が根付いているようでした。





 それから何と言っても、人柄の良さが印象的。あまり外交的な感じではないのですが、その分、生真面目で誠実です。海外旅行と言えば、ぼったくられないように、とか、物を盗まれないように、とか、常にある程度ピリピリしているのが普通だと思いますが、その点、ベトナムは安心して過ごせます。
 あえて難を挙げるとすれば、それは言語コミュニケーション。日本語はもちろん、英語ですら、びっくりするくらい通じません。なので、その辺のことについては、十分な用意と、ある程度の諦めが必要です。
南ベトナム 12月31日
[12月31日]
 南ベトナム最終日。ホーチミンへ向かう道すがら、Madagui、それから初日にも行ったTac Maiに立ち寄るプラン。
 しかし、実際行ってみると、予定していたMadagui周辺のポイントは切り開かれ、環境がダメになってしまっていた。ベトナムは今、経済成長のまっただ中。環境破壊の速度は日本以上かもしれない。仕方が無いので真っすぐTac Maiへ。
 Tac Maiでは、着くなりたて続けに、ハナカマキリの中齢幼虫が2頭見つかった。僕は初日に1頭も見つけられなかったから、雪辱を果たした気分。その後さらに2頭追加して、今日見つけたハナカマキリは、僕だけでも4頭に。初日にも思ったけれど、こんなことってあるんだ


ハナカマキリ Hymenopus coronatus の中齢幼虫 ― 2009年12月31日 Tac Mai, Dong Nai, VIETNAM

 しばらく1人で歩いていると、今度は何やら茶色いシジミチョウを見つけた。最初はシジミタテハの仲間かなとも思ったけれど、ここに分布する茶色系のシジミタテハに、これほどの小型種はない。となると、もしかして。撮影しつつ確認すると、予想通りキララシジミ類のメスだった。それも、ヒューイットソニィやエリキノイデスの所属する Poritia とは、明らかに別属。あとで調べて、Simiskina phalia だということが分かった。Poritia属以外のキララシジミは別格の珍品揃いで、Simiskina はその中ではよく見られる方らしいけれど、それでも珍しい。
 珍品と言えば、Neomyrina nivea のメスも一度出てきた。これがなかなか癖悪くちょこまかと飛び回って、なかなか撮影できない。追い掛けまわしているうちに集合時間を大幅に遅刻し、周りに迷惑をかけてしまった。


Neomyrina nivea ♀ ― 2009年12月31日 Tac Mai, Dong Nai, VIETNAM

 今度は車で少し移動して、Graphium やシロチョウ類の吸水ポイントへ。斉藤さんの話によると、4〜5月には何十頭もの吸水集団が見られる場所らしい。時期柄それほど大きな集団ではなかったけれど、オナガタイマイ Graphium antiphates やアオスソビキアゲハ Lamproptera meges など、様々な種類が集まっていた。


右から、オナガタイマイ Graphium antiphates、タイワンシロチョウ Appias lyncida 6頭、ムモンキチョウ Gandaca harinaEurema sp. ― 2009年12月31日 Tac Mai, Dong Nai, VIETNAM

 と、これにてベトナムでのフィールド活動は全て終了。
南ベトナム 12月30日
[12月30日]
 今度は朝からGung Reへ。心配していた天気も全く問題なし。
 小ピークまで登ると、青いイナズマチョウの仲間が2頭、テリトリーを張っていた。うち1頭は新鮮なTanaecia julii。広域分布の普通種らしいけれど、綺麗で迫力があった。とても敏捷で、撮影は大変。




Tanaecia julii ♂ ― 2009年12月29日 Gung Re, Di Linh, Lam Dong, VIETNAM

 ちなみに、もう一方の個体は、ややスレの目立つ Cynitia stellata だった。2004年に記載されたばかりの種。
 そうこうしていると、何やら、見覚えのない変な黒いアゲハが頭上高くを飛んでいった。さっきからモンキアゲハが周りを飛んでいるけれど、それとは絶対違うし、シルエットも飛び方も普通じゃなかった気がする。となると、クロカギバ? いやいや、そんなはずは。
 その頃、10mくらいの高い木の上で、いくつもの黒い影が争い飛んでいた。なんでも、その影の中に気になるものがあるらしい。海野さんはそれを撮影して、種類を見極めようとしていた。
 しばらくして、海野さんに呼ばれる。木の上の影の正体は、あるものは Athyma nefte だった。けれど、またあるものは、何と、クロカギバアゲハ Meandrusa lochinus だったと言う。信じられない。梢を見上げると、確かに、やや小ぶりな黒いアゲハが2〜3頭、他の蝶に混じって凄まじい速さで飛んでいた。タテハみたいに硬質な羽ばたきで、一見するとアゲハチョウには見えない。すごい。僕は見極められなかった。


クロカギバアゲハ♂ Meandrusa lochinus ― 2009年12月29日 Gung Re, Di Linh, Lam Dong, VIETNAM

 小ピークから戻る途中、イシガケチョウ Cyrestis thyodamas の蛹を見つけた。通路から離れた位置に付いていたのに、どうして見つけられたのか、自分でもよく分からない。


イシガケチョウ Cyrestis thyodamas の蛹 ― 2009年12月29日 Gung Re, Di Linh, Lam Dong, VIETNAM

 ホテルに戻ると、28日に見つけたイナズマチョウらしき蛹が、羽化していた。驚いたことに、コケムシイナズマのメスだった。
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