7月21日、
ムモンアカシジミの羽化写真を狙うにあたって、どの程度の状態の蛹が何頭くらいいるのか、ある程度把握しておきたかったので、
ムモンアカシジミの幼虫を継続観察していたカシワの根元を探りました。
すると、確かにムモンアカシジミの蛹もいくつか見つかったのですが、ひょうたん形の不思議な構造物がいくつも見つかり、気になりました。
▲マダラマルハヒロズコガ、もしくはその近似種の幼虫の蓑。クロクサアリが営巣しているカシワの根元からいくつも見つかった。 (7月22日 青森県深浦町 PENTAX *ist DS,17-70mm)
家に帰ってからそれを調べてみると、どうやらマダラマルハヒロズコガというガ(もしくはその近縁種)の幼虫の蓑だということが分かりました。
新開孝さんの「昆虫ある記」の2007年1月3日の記事によると、そのガはアリの巣に入って朽木などを食すものと考えられていたが、アリそのものを捕食していることが最近解明された、とのこと。
こういう特殊な生態をもつ昆虫に、一種のロマンを感じずにはいられません。
新開さんのその記事を読んで、僕はこのガの幼虫の写真が撮りたくて堪らなくなりました。
その翌日7月22日、この日に羽化しそうだった蛹があったということもあり、再び同じカシワを見に行きました。
そして、ムモンアカシジミの羽化を一通り写し終えた後、このマダラマルハヒロズコガの幼虫の写真を撮りました。
しかし、しばらく撮影しているうちに、いくつかの疑問が浮かんできました。
疑問1:
確かにクロクサアリが営巣しているカシワの根元にいるけれど、そこはアリの巣そのものではない。
アリを食べる、ということは、好蟻性のシジミチョウなんかではアリの”幼虫”を食べる、ということだけれど、巣の外にアリの幼虫がいるはずがない。
疑問2:
アリを食べる=成虫を捕食する、ということなのであれば、巣外にいてもおかしくない。
しかし、アリが近付くと、捕食しようとするどころか、蓑の中に体を引っ込め、明らかに逃げている。
▲蓑から頭を出して落ち葉や何かに噛み付き、そうして蓑を引っ張ることで少しずつ移動していくのが観察された。 (7月22日 青森県深浦町 PENTAX *ist DS,105mm)
▲上の写真の直後のシーン。近づいてきたクロクサアリの触覚が幼虫に接するやいなや、この幼虫は蓑の中に身を隠した。これと同じような行動を何度も確認している。これは、本当にアリの成虫を捕食するのだとしたら、あまりに不可解な行動だ。 (7月22日 青森県深浦町 PENTAX *ist DS,105mm)
あまりに疑問だったので、迷惑は承知の上で、新開さんにメールで問い合わせてみました。
すると、この蛾がアリ食と判明したのは解剖調査で体内からアリ成体の残骸が確認されたからなのだけれど、実際にこのガの幼虫がアリを捕える瞬間を見た人はまだいない、という旨の回答をいただきました。
なるほど解剖調査でアリ成体の残骸が出てきたならアリを食べていることに間違いないし、成虫を食べているなら巣外で生活していてもおかしくない、と思うと同時に、誰もその捕食の瞬間を見ていないのであれば、やはり何か間違っているのでは?と思わずにはいられませんでした。
事実、この小さな口器と脚で、どうやって自分と同じかそれ以上の大きさで、かつ何倍もの力をもつアリの成虫を捕まられえるというのでしょうか。
不思議でなりません。
アリの成虫の死骸を食べる、というのであれば、この形態でも納得できますが・・・
▲ちなみに、蓑を開いてみるとこんな感じ。 (7月22日 青森県深浦町 PENTAX *ist DS,17-70mm)