[12月28日]
今日は二手に分かれて、僕たち親子と青木さんはDambri、海野さんと海原さんはGung Reへ行くことに。Dambriはお馴染みの茶畑ポイントだから説明を省くとして、Gung Reというのは、山あいの原生林ポイント。山の常で天候には不安がつきまとうものの、ここでしか見られない種もあるらしい。
青木・工藤組は、Dambriまでタクシーで移動。帰りに車を呼ぼうにも言葉が通じない(英語もほとんど通じない)ので、タクシーは1日貸り切って、待機していてもらうことにした。たしか700,000VDNだったと思う。相場を知らないから、これが高いのか安いのか分からないけれど、日本円換算で約3,500円。ところで、運転手さんに、今日1日貸し切りたいんだけど、と頼むと、随分驚いて、価格設定に困っているようだった。こんな客は、よほど珍しいらしい。今回の拠点Bao Locは、比較的大きな町ではあるのだけれど、旅行ガイドブックには載っていないし、外国人観光客と会うこともまずない。もちろん、それほど豊かなわけでもない。そう考えれば、なるほどという感じ。
今日も天気は良過ぎるくらいに良く、キララシジミのディスプレイ時間は短かった。まあ、そうじゃなかった日なんて、1日として無かったのだけれど。
しばらくして、偶然、
独特な形の垂蛹を見つけた。タテハチョウ科ということまでは間違いないと思うけれど、この形は
……なんだっけ。もしかして、イナズマチョウの類かなあ。父と青木さんを呼び聞いてみるものの、結論は出ず。東南アジアの蝶は食餌植物を知らないどころか、僕の場合、照葉樹はどれも皆同じに見えてしまうレベルの人間だから、こういう発見はいつも全くの偶然。
数日前から目を付けていた樹液に、オナガアカシジミ
Loxura atymnas が来ていた。マレーシアで見たのは
L. cassiopeia だったから、この属2種目。しかし、この個体以外、ハエ数頭を除いて、他に何もいなかった。小型甲虫とか、もう少し集まっても良いと思うんだけどな。
オナガアカシジミ
Loxura atymnas ― 2009年12月28日 Dambri, Lam Dong, VIETNAM
Abisara neophron も撮影。日本には分布しないシジミタテハ科の蝶。今までも何頭となく見かけていたけれど、欠け、スレの目立つ個体が多く、ようやく綺麗な個体に当たった。
Abisara neophron ♂ ― 2009年12月28日 Dambri, Lam Dong, VIETNAM
そういえば、今日は警察を呼ばれた。若い警察官が2人、それも、偶然で鉢会うことなど有り得ない、辺鄙な林道で話しかけてきたものだから、最初は何事かと思った。インドネシアで警察にたかられた、とか、そういうのはよく聞く話だし。けれど、話を聞いてみると、どうやらそういう物騒な事情ではないらしい。
何ということは無い。タクシードライバーが、僕たちの荷物を盗まれたと勘違いして、通報してしまったのだ。実際は、僕が荷物の場所を移動させていただけだったのだけれど。それにしても、誠実な警察官とタクシードライバーだった。ベトナムの人柄は、とても印象が良い。田舎だから、尚更そうなのだと思う。
さて、Gung Reへ行った海野さんたちは、随分と良い結果をあげてきたようだ。この地域ではろくに記録の無い
カバシタアゲハ Chilasa agestor まで撮影していた。カバシタアゲハといえば、2年前、海野さんに「その時期(年末)ならジャサールでカバシタアゲハが見られるよ」と勧められ、ジャサール山に登って、やっとのこと撮影した覚えがある。そんなこと言うものだから、てっきり、海野さんはカバシタアゲハを見たことがあるものとばかり思っていたけれど、実はこれが初めてだったらしい。