今年は随分とフユシャクに熱くなってしまった。フユシャク、特にInurois(ウスバフユシャク類)については本を調べたり自分なりに色々考えてみたりもしたけれど、未だによく分からないことが多く、同定もろくに出来ていない。Inuroisはそもそも繁雑で難しい分類群だけど、分からないのはそのせいだけではないような気がする。関東を中心として蓄積された現在の情報と、青森での実情とが必ずしも合致していないのではないか、と疑わずにはいられない。
さて、来年フユシャクを探す自分のために、今シーズン観察したこと、分かったこと、気になったことなどを書き残しておこうと思う。
[フユシャク亜科]
シロオビフユシャク
11月下旬に弘前公園で確認。弘前公園では数は多くない。
ウスバフユシャク・ヤマウスバフユシャク
弘前公園で確認しているが、山地ではまだ見ていない(観察した時期が悪かったのかも)。いかにもウスバフユシャクという斑紋をした個体もいるが多くなく、むしろ、やけに黒線が発達していて地色の濃い個体が多い。後者はヤマウスバフユシャクではないかと考えているが、それにしても黒線の発達が強く(特に翅頂部から伸びる黒線の発達が著しい)、タイプ産地である日光のヤマウスバフユシャクと本当に同一のものなのか検討を要するところだと思う。(それに、ウスバフユシャクの個体変異に過ぎない可能性も捨てきれない。)
弘前公園で見られるInurois属では、ヤマウスバフユシャクと思われるものが最も多い。ヤマウスバフユシャクのオスは、指で軽く触れただけで擬死するのも特徴的。(他の種も一応擬死するが、ヤマウスバほどでない。)
ヤマウスバでは、配偶行動が日没前後に行われるのを観察している。
▲ウスバフユシャク ―2007年12月08日 青森県弘前市 弘前公園
▲ウスバフユシャク
Inurois sp. フタスジフユシャク的な斑紋だけれど、外横線が湾曲している。 ―2008年11月27日 青森県弘前市 弘前公園
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Inurois sp. ―2008年11月24日 青森県弘前市 弘前公園
クロテンフユシャク
低山地〜山地に多く、低地ではあまり見かけない。晩秋〜初冬のほか、早春にも発生している。
フタスジフユシャク
まだ、これぞフタスジ!と断言できる個体を見ていない。フタスジらしき個体は弘前公園でたまに見かけるけれど、往々にして外横線が直線的でない。この地域のフタスジ(あるいはその代置種)はこういう特徴を示すのだと考えられなくもないけれど、ウスバフユシャクやヤマウスバフユシャクの一部を誤同定してしまっているのかもしれない。
ウスモンフユシャク
低地から山地まで、どこでも多い。配偶行動は日没前後に行われるのを観察している。
▲ウスモンフユシャクの交尾 ―2008年11月27日 青森県弘前市 弘前公園
[ナミシャク亜科]
コナミフユナミシャク・オオナミフユナミシャク
低地から山地まで、どこでも多い。ただ、この2種の区別は困難。
弘前公園にいるものは安定してメスの翅が大きく、ほぼ全てオオナミフユナミシャクだろうと考えられるが、岩木山では翅の小さいメスも数頭得られており、コナミフユナミシャクとオオナミフユナミシャクの2種が混生しているのではないかと考えている。
配偶行動は日没直後。
イチモジフユナミシャク
低地から低山地で多く観察している。弘前公園では黒化型が結構な頻度で見つかっている。
配偶行動は、オオナミフユナミシャクよりもやや遅い時間に行われているような印象。
▲イチモジフユナミシャク♀の黒化型 ―2008年11月14日 青森県弘前市 弘前公園にて採集(屋内撮影)
クロオビフユナミシャク
屏風山のカシワ林に多い。岩木山のミズナラ林にもいる(数は少ない)。
黒みの強いタイプと弱いタイプの2型ある。ヒメクロオビフユナミシャクとは、触覚の櫛歯で見分けられる。
[エダシャク亜科]
ウスオビフユエダシャク
山地で見られる。屏風山のカシワ林でも確認。
クロスジフユエダシャク
昼行性の普通種。屏風山のカシワ林でも確認。
当然、配偶行動は日中に行われる。
シロフフユエダシャク
早春に発生する。発生時期はヒメギフチョウより少し早いくらい。
フチグロトゲエダシャク
2008年04月25日の日記を参照
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