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テイオウシジミ
 このテイオウシジミ Neomyrina nivea は、尾が長い上に珍品で、かつ超大型という、とりわけ格調高い樹上性シジミ。テイオウシジミの呼称もその格調高さに由来するものと思います(本当か?)。シジミチョウとは思えないほど大型で、ぱっと見ではイシガケチョウと錯覚するほど。
 前回は1♀しか見られなかったのですが、今回は食樹に集まるメスが何頭も見つかりました。


テイオウシジミ Neomyrina nivea ♀ ― 2010年12月25日 Thac Mai, Dong Nai, VIETNAM 父撮影

 矢後さんは卵や幼虫まで見つけていました。テイオウシジミはムラサキシジミの仲間に比較的近縁と考えられているらしく、幼生期の形態・生態も似ているのだとか。幼虫とアリの関係もムラサキシジミ類と同じで、所謂アリ蝶と表現できるほど依存したものではなく、分泌物を与える代わりに身を護ってもらうという簡易なもののようです。シリアゲアリ類と一緒にいることが多いという話でしたが、今回まとわりついていたのはヒメアリの仲間でした。


ヒメアリの一種 Monomorium sp. とテイオウシジミ N. nivea の中齢幼虫 ― 2010年12月25日 Thac Mai, Dong Nai, VIETNAM
Rapala iarbus
 東南アジアではトラフシジミの仲間(Rapala)が多様に種分化しています。翅表の色も様々。この R. iarbus は朱色に輝く種類です。赤い Rapala は何種類かいるのですが、いずれも日本のチョウには無い色調なので見かける度どきりとします。しかし綺麗なのはオスだけ。撮影できたのはメスばかりで、翅表は地味な茶色です。


マメ科植物に産卵する Rapala iarbus ― 2010年12月25日 Thac Mai, Dong Nai, VIETNAM


Rapala iarbus ♀ ― 2010年12月31日 Dambri, Lam Dong, VIETNAM 父撮影
車壊れたその後
 最初の目的地Thac Maiに到着したのは午後1時を回った頃でした。熱帯での昆虫探索はとにもかくにも午前中が命。あまり良い予感はしません。よりにもよって、どうして今日、車が壊れるんだよう。嘆いていても仕方が無いので林道を歩きます。


2010年12月25日 Thac Mai, Dong Nai, VIETNAM


2010年12月25日 Thac Mai, Dong Nai, VIETNAM

 めぼしいチョウは見当たらず、細々とした虫を探し歩くことに。驚かされたのは、鞘豆に紛れているツユムシの仲間。すごく豆っぽい。地味だけど。
 それにしても虫が少ない。時間帯によるものを差し引いても、これはおかしいんじゃないか?


Hypolycaena othona ♂ ― 2010年12月25日 Thac Mai, Dong Nai, VIETNAM 父撮影


Hypolycaena othona ♂ ― 2010年12月25日 Thac Mai, Dong Nai, VIETNAM


アオスソビキアゲハ Lamproptera meges ♀ ― 2010年12月25日 Thac Mai, Dong Nai, VIETNAM

 動きの怪しいアオスソビキアゲハを見かけたので、もしかしたらと撮影。予想通りメスでした。この仲間のメスは珍品だと聞きますが、これでもかと言うほど雌雄同型でつまらないのが悲しいところ。


Graphium sp. の羽化殻 ― 2010年12月25日 Thac Mai, Dong Nai, VIETNAM

 羽化殻は見つかれど生蛹は見つからず、難を越えて現地に着けど成果は振るわない、そんな1日でした。
ベトナムにて車壊れる
 ベトナム旅行初日、出発早々に車が壊れて、見知らぬ街で数時間立ち往生しましたよ。ざっと纏めてしまうと、今回はそんなお話。
 最大都市ホーチミン(南部)から首都ハノイ(北部)までを結ぶベトナム国道1号線。結構な数の自動車と信じられないほど大量のバイクが絶え間なく行き交うベトナム最大の道路交通です。早朝5時にホーチミンのホテルを出発し、一行は前途洋洋、国道1号線を進みました。最初の目的地はThac Mai。去年、ハナカマキリを沢山見つけたポイントです。
 ホーチミンから離れて国道も少し空いてきたかなというところ、何やら運転手さんの様子がおかしい。苦笑いしながら、僕たちに何か伝えようとしている(でもベトナム語だから全く分からない)。そういえば車の様子はもっとおかしい。遅い。ていうか全然前に進んでなくない? あ、原チャに抜かされた。なるほど。車が故障したんですね。参ったな。



国道1号線とジンガサハムシの一種 ― 2010年12月25日 Bien Hoa, Dong Nai, VIETNAM

 車屋さんで診てもらったものの簡単には直らないらしく、代車が来るまで待つこととなりました。勿論、立ち寄る予定なんか無い知らない場所。あとになってから調べたことですが、どうやらビエンホアという街のようでした。
 黙っていても仕方が無い、というかひたすら暑いだけなので、とりあえず道路脇を散策してみることに。Spaticaさんは早速大型のジンガサハムシの仲間を見つけていました。また、その周りでは南ベトナムの最普通種ヒメシルビアシジミ Zizina otis が沢山飛んでいて、その中にヤマトシジミ Zizeeria maha も少数ながら紛れていました。こういう時、いくら普通種とは言え普段見られないヒメシルビアでなく、腐るほど見たことのあるヤマトシジミを優先的に追い掛けてしまうのは、どうしてなんですかね。でも南ベトナムでヤマトシジミに会うのは初めてでした。ちょっとだけ嬉しい。
 人目を気にしつつ地面にかがんで一通り撮影、したのですが、しかしそこはさすが国道1号線。ホーチミンからだいぶ離れているとは言え相当な交通量です。僕が撮影しているそのすぐ隣を、何台ものバイクが駆け抜けていきます。結構怖い。


ヒメシルビアシジミ♀ Zizina otis ― 2010年12月25日 Bien Hoa, Dong Nai, VIETNAM


ヤマトシジミ♂ Zizeeria maha ― 2010年12月25日 Bien Hoa, Dong Nai, VIETNAM

 国道沿いで腹ばいになり茂みに頭を突っ込んでいる日本人の姿は、ベトナムの人の目に異様に映ったようで(そりゃそうだ)、よく話しかけられました。「日本ノ人デスカ? 私コノ前マデ日本デ勉強シテイマシタ!」と爽やかに日本語トークを仕掛けてきた好青年(真面目な表情のまま「女持ッテマスカ?」と聞いてきたこともあったけれど何をどう間違ったのだろう。)から、好意的に見守ってくれている(と僕が勝手に判断した)寡黙なおじさま・お兄さま、家の庭からリンゴドクガの仲間の幼虫を持ってきてくれた近所のお姉さん(美人だったような気がする)まで。お姉さんは何やら沢山喋っていましたが、ベトナム語なのでさっぱり分かりませんでした。「これを触ったら痒くなる」的な話をしているのだと、フィーリングだけで強引に納得しました。
 その間も、カバマダラ Danaus chrysippus が飛んできたり、エリルスフタオルリシジミ Hypolycaena erylus のメスが降ってきたり。しょうもない道端というか国道沿いなのに、曲がりなりながらも虫を楽しめてしまう辺りはさすが東南アジアという感じ。


カバマダラ Danaus chrysippus ― 2010年12月25日 Bien Hoa, Dong Nai, VIETNAM


エリルスフタオルリシジミ♀ Hypolycaena erylus ― 2010年12月25日 Bien Hoa, Dong Nai, VIETNAM 父撮影

 しばらくして代車が到着し、いよいよ一同 Thac Mai へ。結局、2時間半くらい待ちました。この後の Thac Mai はまさかと思うほど虫が少なく、再び唖然とするのですが、誰もまだそのことを知りません。

 (この形式は面倒だから)多分続かない。
エダカマキリ
「おっ、ナナフシ見っけ」
 見つけた時にはそう思ったのですが、しかし近寄ってよく見るとカマキリの幼虫でした。胴体から脚に至るまで全体に細身で、胸部がやたら長く、頭部は小さめ。こういう虫の和名はもともと有って無いようなものなので、とりあえずエダカマキリと呼ぶことにします。
 このページ(英文)で紹介されている種類に近いものだと思うのですが、となると、成虫はメスの翅だけ極端に短い、僕好みの雌雄異型ではないですか。成虫が見たかったな。



エダカマキリの幼虫 Euchomenella sp. ― 2010年12月26日 Lam Dong, VIETNAM

 同種の緑色型と思しき個体も見つけました。これまた幼虫でした。


緑色型 Euchomenella sp. ― 2011年01月01日 Tac Mai, Dong Nai, VIETNAM
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